子どもとうまく接するには子どもに受容を感じさせなければならない―親業―子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方

公開日: 教育 子育て 本紹介

子どもとうまく接するために_画像

概要

 この本では「受容」という言葉が非常に重要なキーワードになっています。 

 「非受容」は相手を閉鎖的・防衛的にし、不快感を起こさせ、自分を見つめたり自分について話すことをこわがらせるようにさせる。

 「受容」は小さな種子の中の美しい花となる可能性を育てる肥えた土壌のようなものである。

 親の受容が、重大で肯定的な影響を子どもに与えることは一般に十分に理解されていません。

もちろん親が子どもを受容することと、受容されていると子どもが本当に感じているかどうかはしっかり分けて考えないといけないでしょう。

もくじ
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受容を示す方法

干渉しないことで示す

 子どもがなんらかの活動に従事しているのを邪魔しないことは、受容を伝える強力な非言語的コミュニケーションの方法である。

 ほとんどの親は単に口をはさむ、仲間に入る、干渉するということで、自分がどれほどしばしば非受容を伝えているか認識していない。

 子供を放っておくという行為があまりにも少なすぎる。子供部屋のプライバシーを侵し、子供個人のプライベートな考えのなかに押し入り、自分と別人であることを許そうとしない。

受動的な聞き方で示す 

「何もいわないこと」や相槌をうつだけのことでも受容を伝えられる。 「受動的な聞き方」は協力な非言語メッセージで、本当に受容されていることを相手に感じさせるのに効果的である。カウンセラーなど人助けの専門家はこのことをよく知っていて、沈黙をよく使う。

「おきまりの12の型」を言わないようにする

  1. 命令、支持 
  2. 注意、脅迫 
  3. 訓戒、説教 
  4. 忠告、解決策などを提案 
  5. 講義、論理の展開 
  6. 批判、非難 
  7. 称賛、同意 
  8. 悪口をいう、ばかにする、辱める 
  9. 分析、診断 
  10. 激励、同情 
  11. 質問、尋問
  12. 中止、注意をほかへそらす

ことばで伝える―心の扉を開くことば

はっきりと何もいわない反応 
「そうか」 
「本当かい」 
「まあ」
「まったく」
「ふーん」
「冗談じゃないねぇ」
「それはまあ」
「そうだったのか、フン、フン」
「面白いね」
「そうだろうとも」

もっと話すように、というすすめを更に、はっきり伝えるためには 

「それについて話してごらん」
「それについて、もっと知りたいんだけど」
「君はどう思う。聞きたいね」
「ちょっとそれについて話してみようよ」
「どういうことかな。君の意見は?」
「いいたいことを簡単にいってごらん、聞いてあげるから」
「これについては、君のほうにもなにかいいたいことがありそうだね」
「君には大事なことのようだね」

 このように扉をあける言葉は、自分の感情や思考をコミュニケーションの過程にまきこまない受容を伝えやすい方法です。 扉を開くことばは、実際には次のようなメッセージであり、受容されていること、一人の人間として尊重されていることを子どもに伝えます。 

「どう思うか表す権利が、君にある」 
「意見や感情をもった一人の人間として、君を尊重するよ」 
「君からなにかを学べるかもしれない」 
「君がどう考えるか、本当に知りたいんだ」 
「君の意見は人にきかせる値打ちがあるよ」 
「私は君に関心があるんだ」 
「私はもっとよく君のことを知りたいんだ」

能動的な聞き方

 話をするように、との招待状にしかすぎない扉を開くことばより何倍も効果があるもうひとつの方法がある。 扉を開くことばは、子どもが話すようにと扉をあけるだけである、親は「扉をあけたままにしておく」方法を学ぶ必要がある。

  1. 子 (泣きながら)ジミーが僕のトラックを取っちゃった。
    親 いやねえ。ジミーがそんなことするといやよねえ。
    子 そうだよ。

  2. 子 ビリーがおうちの人といっしょに旅行しているから、僕はいっしょに遊ぶ子がいないんだよ。
    親 ビリーがいっしょに遊べたらいいのに。ビリーがいないから、なにをして遊ぼうかなあって考えてるの?
    子 そうなんだ。なんかないかなあ。

  3. 子 あーあ、こんどの担任の先生っていやなんだ。嫌いだよ。年寄りで文句ばかりいうんだもの。
    親 先生のことでがっかりしてるみたいだね。
    子 そうなんだ。

  4. 子 ねえ、どうしたと思う、お父さん? バスケットボールの選手になったんだぜ!
    親 そうか。いい気持ちだろう。
    子 そうさ。

  5. 子 ねえ、お父さん、小さいとき、女の子のどこが好きだった。女の子を好きになったとき、その子のどういうところがいいと思ったの?
    親 男の子に好かれるにはどうしたらいいかって考えてるみたいだね。ちがうかい。
    子 そう。男の子は、私のことあんまり好きじゃないみたいだし、私にはどうしてだかわからないの。

  以上の例では、いずれも親は子の感情―子どもの「内側」になにがあるか―を正しく解読している。そして子供は、「私のいったことを正しく理解した」という意味の表現で、親の解読のただしさを裏付けている。

 子どもが思想や時事問題で悩んでいるときにも、親が能動的な聞き方を使うようにするために次のような疑問を子どもの親に投げかける。
「子供はあなたと同じような考え方をしなければならないのか」 
「どうしてあなたが子どもに教える必要があるのか」 
「あなたの意見と異なった意見を認めることはできないのか」 
「この複雑な世の中で、子どもが自分なりの見方ができるように助力することが、あなたにはできないのか」 
「未熟でも子どもが自分で問題を解決しようとしている姿をそのまま認めてやれないのか」 
「あなたは自分が子どものとき、世の中の問題に対して自分なりの面白い考え方をしていたのを、忘れてしまったのか」

能動的な聞き方の注意点

  • 能動的な聞き方は子どもを操作するための技術ではない。あくまで子どもを受容し子どもに考えさせることが目的である。 
  • 能動的な聞き方を使い、本当の気持ちが出ると評価、判断、教訓、忠告をするのはいけない。

 子供は猜疑心が強くなり、親はあとで自分に評価を下したり、やりこめたりするために自分からなにかを聞き出そうとしているのだ、と思い始める。

問題を「親が所有」している場合は「わたしメッセージ」

 能動的な聞き方は、子どもが問題をもつときには有益であるが、親が問題をもつときには不適切。また、子どもが解決を見つけるうえでは有益だが、子供の行動が親に問題を起こしている場合には、ほどんと役に立たない。

次のような問題は、「子どもが所有」している


  • ジミーはある友だちから親しくしてもらえないと感じている。
  • ビリーは学校でテニスの選手になれなくて悲しい。 
  • リンダは男の子からデートの申し込みがないのでイライラしている。
  • ブルースは学校をズル休みしたので、二日間の停学処分を受けた。
  • フランはピアノのレッスンが好きでない。
  • ボニーは職業の選択ができないでいる。
  • ラルフは大学へ進むべきか否か迷っている。
  • ボビーはゲームで兄に負けると怒る。 
  • リッキーはある先生が嫌いなので、その学科の成績がよくない。 
  • バーバラは背が高すぎて恥ずかしい。
  • ベッツィは二つの学科で落第するのではないかと悩んでいる。
  • ジョンは宿題をやるのが嫌だ。

次のような問題は、「親が所有」している


  • 大切にしている陶器の傍に近づく。
  • 新しい椅子の背に足をのせている。 
  • あなたと友人との話を中断させる。
  • 隣人との話をあめて自分といっしょに向こうへ行くようにと、子どもがあなたの手を引っ張る。
  • 居間に玩具を散らかしっぱなしにする。
  • コップの中のミルクを、じゅうたんの上にこぼしそうにしている。
  • もうひとつだけお話を読んで、と次から次へと本を読むようにせがむ。
  • 自分が飼っている犬に餌をやらない。
  • 自分が分担した家の仕事をきちんとやっていない。
  • 父親の大工道具を使ったまま家の前に放り出している。
  • 親の車を超スピードで運転する。

「親が所有」している問題については、「わたしメッセージ」が有効である 

 子どもに蹴られた場合を例にとって考える。 「イターイ! あーあ、痛かった――蹴られるのはイヤだなあ」これは「わたしメッセージ」である。

 「悪い子ね。そんなふうに人のことを蹴ったらダメじゃないの」これは「あなたメッセージ」である。


 つまり、子どもの行為を受容できず問題を「親が所有」している場合、「あなたメッセージ」のように子どもを評価しないで、自分の感じていることを子どもに伝えるのである。

「わたしメッセージ」は、子どもの行動を変えていくのを子ども自身の責任で行わせるのだから、無限の効果をもつ。「イターイ! あーあ、痛かった」と「蹴られるのはイヤだなあ」とで、自分がどう感じているかを子どもに伝えるが、それについてなにかをする責任は子どもに委ねてある。

 その結果「わたしメッセージ」は、子どもが成長するのを助け、自分の行動に責任をもつことを学ばせる。「わたしメッセージ」が子どもに伝えるのは、子どもに責任をもたせていること、子どもが状況を建設的に取り扱えるとあなたが信じていること、あなたの欲求を子どもが尊重してくれると思っていること、建設的に行動する機会を子どもに与えていること、などだ。

「わたしメッセージ」は、正直な感情を伝えるものであることから、子どもがなんらかの感情を抱いたときに、子どものほうからも正直なメッセージを送るようになる効果をももつ。

 人間関係の一方からの「わたしメッセージ」は、他方からの「わたしメッセージ」をも促す。「あなたメッセージ」についても同じであり、だからこそ関係が悪化していくと、対立から悪口の投げ合い、非難の応酬にすすんでいってしまう。

親には3つの型がある

勝者型

 子どもに対する権威、権力をふるうのは当然のことと考え、その権利をしっかり守る。子どもの行動に制限をもうけ、ある特定の行動をすることを要求し、命令をくだし、従順であることを期待する。子どもがいうことをきくように罰の脅威を利用し、いうことをきかないと罰を与える。親の欲求と子の欲求がくいちがう場合、つねに親が勝って子が負けるような形でそれを解決する。 一般にこういう親は、親が勝つことを正当化するために、「父親がいちばんよくわかっている」「子どものためだ」「子どもは本当は親の権威を求めている」といった決まりきった考え方や、または単に「なにがよくてなにが悪いかは、親がいちばんよく知っているんだから、子どものために親の権威を使うのは親の責任である」などという、漠然とした考え方に頼っている。

敗者型  

 勝者型よりは数は少ないが、いつも子どもに大幅な自由を許す。制限をもうけるのを意識的に避け、自分たちは権威主義的方法は認めないと誇らかにいう。親の欲することと子の欲することとが対立する場合、かなりの一貫性をもって「勝つのは子ども、負けるのは親」となる。というのも、そういう親は、子どもに不満を残すのは子どもに有害だと考えるからである。

動揺型

 親のなかでたぶんいちばん多いのは、以上の二つのやり方の一方だけを一貫して使えない型ではないかと思う。その結果、双方を適当に調和させようとして、厳格と寛容、制限と自由、勝者と敗者との間を揺れ動く。ある母親のいうように、 「子どもにできるだけ自由を許そうと努力しますが、放っておくと子どもが大変悪くなってしまい、とてもみていられなくなります。
 そこで、もうこのままではダメだと思って、権威をもって子どもに接しはじめるのですが、こんどは非常に厳格になりすぎて、自分がいやになってしまいます」 親業訓練講座で自分の気持ちについて発言したこの親は、それと知らずに動揺型の数多くの気持ちを代弁していたのである。こういう親がたぶんもっとも混乱した自信のない親であり、後にふれるように、こういう親の子どもがいちばん被害を受けている。


 今日の親が陥っている最大のジレンマは、家庭内での対立―親と子の間に必ず起こる―を扱う際に、二つの方法しかないと思い込んでいることにある。

 二つの方法しか目に入らないから、「私が勝ち、子どもは負け」の方法をとるか、「子どもが勝ち、私は負け」の方法をとるかになり、多くの親は両者のいずれにすべきか決めかねている、ということになる。 この本では、二つの「勝ち・負け」法以外に、もうひとつ方法がありそれを「勝負なし」法と呼んでいる。

「勝負なし」法とは


 親が、「両方に受け入れられるような解決策をいっしょに考えてみないか」と子どもにいい、親子で考えつく解決策をいろいろ出して出てきた案を批判したり評価したりしながら、親と子どもが受け入れられる策を選んで決める。 

 両方が受け入れられる解決策を選んでいるのだから、決めたあとで相手にその解決策を売り込む必要はないし、従順、同意を強制するための権力も必要ない。 「勝負なし」法では「参加の原則」に従っているので、解決策を実行しようという気持を、子供が強くもつことになる。

  人間は、他人から強制されたことよりも、自分が決定に参加したことのほうを実行する気持になる。

 「勝負なし」法を使ったからといって、その解決策を子供がいつも熱心に実行する保障はないが、実行の可能性は非常に大きくなろう。子供は、「勝負なし」法での決定は「自分の」決定だという感じをもつその解決策で決まったことは、なにか自分の責任のような気がし、その実行にも責任を感じる。また、子供の敗北を犠牲にして親が勝とうとしなかった事実に、子供も好感をもち、好ましい反応でそれに応える。

勝負なし法は家族会議の焼き直しではない

 勝負なし法は「お説教」や「教育」をすることなどではない。互いの対立を解き親子が一緒に、二人で独特の答を探し求めるのであり、あらかじめつくられた答えがないのがふつうである。だれも負けるわけではないし、「議長」や「指導者」もない。親と子は対等の当事者として、共通の問題に対する答えをともにさがす努力をするのだ。

勝負なし法には、実際には6つの段階があり、この順序に従うとうまくいく可能性が高い 

  1. なにについての対立かをはっきりさせる
  2. いろいろな解決案を出してみる
  3. 出てきた解決案をひとつひとつ評価する 
  4. いちばんいい解決策を選ぶ
  5. その解決策をどうやって実行するか考える
  6. うまくいっているかどうかを調べる

 勝負なし法では、対立する当事者がいっしょになって問題解決にたずさわる必要があるので、効果的なコミュニケーションが必要な前提となる。したがって、親はたびたび「能動的な聞き方」を使い、明確な「わたしメッセージ」を送らなければならない。こういう技術をまだ十分身につけていない親は勝負なし法でも結果を生みにくい。

まとめ

子どもには「受容的な態度」、「能動的な聞き方」、「心の扉を開く言葉」を使い受容していることを伝え、問題を「親が所有」する場合は「あなたメッセージ」をつかわずに「わたしメッセージ」を使う。 対立があれば「勝負なし法」でお互いに協力して解決策を探す。

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